ライブ会場やバンド練習のスタジオの中は、かなりの音量だって知っていましたか?
この音量、実はあなたの耳や神経に相当なストレスをあたえています。
「ライブ会場へ音楽を聴きに行くのに耳栓なんて変じゃないの?」
あなたがそう感じるのも不思議ではありません。
耳栓はさまざまな場所で私たちが音楽を楽しむために役立ってくれます。
私が耳栓マニアのように5年以上かけて20種類を超える耳栓を試してきた経験から、耳栓の有効性とおすすめの耳栓をご紹介しましょう。
耳はさまざまな器官からできています。
鼓膜は想像できますね。
そのほかにどんな器官の名前を聞いたことがあるでしょうか。
三半規管・内耳・外耳もよく聞くことでしょう。
大音量の中に長くいると音量に慣れてきます。
それは中耳の中にある「アブミ骨筋」という体内組織が関係しているのです。
「アブミ骨筋」が聴覚へ機能反射し、外から入ってくる大音量(おおよそ80dB以上の音)を80dBまで下げて内耳へ伝えるように私たちのカラダはできています。
つまりアブミ骨筋は自然と耳栓の代わりをしてくれているのですね。
「なんだ、それなら耳栓はいらないよ!」
そんな風に感じられた方も多いことでしょう。
ドラムのように瞬間的に過ぎ去っていく音を聴き続けると、このアブミ骨筋の機能では硬化するスピードがついていかなくなるのです。
ドラムを「タン・タン・タン・・」と聴き続けることは、このアブミ骨筋の「収縮〜元に戻る〜収縮〜元に戻る〜・・・」と酷使させていることに。
そういったことから大音量かつ粒立ちの音が主なマーチングドラムの盛んなアメリカでは、耳栓をすることが半ば常識となっています。
高齢者の筋力が若者にかなわないように、アブミ骨筋も使いすぎると老化していきます。
その退化は、筋肉が硬くなったままとなるため、繊細な音が聴こえなくなるのです。
また聴覚神経でもある有毛細胞にも悪影響が。
また、耳が守ってくれる音量にも限界がありますし、体力的な寿命もあります。
硬くなったり柔らかくなったりできる能力には限界があるのです。
お年寄りの耳が遠いのは聴覚神経の問題もありますが、この体内物質が硬くなったまま柔らかく戻れなくなっていることも一因でしょう。これは常に耳栓をしているような状態となり外の音を感じ取る能力が弱ってくるため「耳が遠くなる」と表現されます。
つまり「耳が遠くなる」というのは「自分の体内耳栓」をずっとしているような感じなのです。
長く音楽を楽しむためにもこの様な状況になりたくないですよね。
そこで耳栓が役に立ってくるのです。
耳栓は耳にフタをすることになるので、瞬間的に突入する大音量に耐えることができます。
また最近の耳栓は優れものが多く、高域・中域・低域のそれぞれを何dbずつカットするといった周波数特性の機能が備わっています。
その機能と遮音性によってお値段や効果が変わってきますので、自分にあったモデルを探してほしいところです。
私もこれまで20種類を超える耳栓を試して、用途別で主に2種類を使い分けています。
そんなに試してオススメは2種類しかないの?という疑問も生じることでしょう。
しかし、日常生活の中で耳栓が必要な場面は限定的ですし、何種類も持ち歩くことも不便です。
厳選したオススメ商品を後ほどご紹介しましょう。
音楽演奏に適した耳栓というものが発売されていて、その遮音機能に特性があることもご紹介しました。
何度も繰り返し使えるタイプのもの、ある程度の期間で消耗品として買い換えるものがあります。
もちろん耐用期間にあわせて、ある程度のお値段設定がなされているのでご安心ください。
一番簡単に耳栓を入手できるのはドラッグストアやホームセンターです。
ご近所のドラッグストアにも科学の耳栓で有名になったスポンジタイプが数種類ならんでいることでしょう。
ホームセンターでは電動工具の売り場付近に騒音防止用として販売されています。
そして気になる音楽用ですが、この数年で随分入手しやすくなりました。
楽器演奏用として、楽器店にも多くの種類が並べられています。
しかし、ご注意ください。
道具というものは用途があって、その用途を満たすかどうかが大きな違いになってきます。
耳栓の場合、高価なものが多機能で良いモデルとは限りません。
楽器店でもボーカリスト用・ドラマー用・ライブ鑑賞用など、さまざまなモデルが幅広い価格帯で販売されています。
楽器店で販売されているものは比較的高価なので、通常、何種類も一度に購入して試すことは難しいですね。
そのため、比較的リスニング用に近いものから試してみて「高域を遮音したい」「中域を遮音したい」という要望にあわせて選び進めていくと良いでしょう。
私が耳栓を使う目的は、大きくわけて次の2つです。
たとえば、バンド練習でスタジオに入り、防音ドアを閉めます。
楽器のセッティングをしている最中、急に誰かが大音量で音を出すと、もうこれだけであなたの耳はフラフラ。
簡単に言うと耳が疲れているのです。
実際には聴力にまつわる聴覚神経や脳神経にもダメージがあるので、こういう突入音に備えるため、スタジオに入ったら誰かが音を出す前にまず耳栓をしましょう。
これは聴きたくない音を聴かないための工夫のひとつです。
バンド練習をするようなスタジオでは防音・吸音されているとはいえ、やはり反響音・残響音は存在します。
残響音が多く残ると余韻が長く感じられたりしますが、本当の音を聞き分けにくくなり粒立ちがあいまいに。
そこで、耳栓を使って反響音や残響音をカットしましょう。
カラオケで深すぎるリバーブ効果を弱くする、あの感じです。
特に、リズム楽器ではビートが聴きやすくなり、音の粒が明確に。
聴きたい音を聴くためのひとつの方法です。
演奏する場面以外でも、ホール、アリーナやライブハウスといったライブ会場で音楽を聴く場合にもさまざまな場面で耳栓は役立ちます。
音楽向けに建てられたオペラ劇場の音響特性と、東京ドームのような収容人数を意識した会場の音響特性はまったく異なります。
音楽は聴かせたい音を鳴らしているのですが、東京ドームのように鳴り響く会場には反響音や残響音をうまくコントロールする機能はありません。
もちろんPAさん(音のバランスを調整する音響スタッフさん)も音響特性を見極めながら調整してくれますが、その会場にあわせた最善の音作りをしてくれるのであって会場の建物を作り直すようなことは現実的ではないですよね。
そこで、私たちリスナー側にできることのひとつとして耳栓があります。
適度にカットしてくれて聴きたい音をスッキリと際立てて聴かせてくれるのです。
それはボーカリストのいるバンド・いないバンドに関係なく、音楽をくっきりと浮かびあげてくれる効果を耳栓で実現できます。
これも、聴きたい音を聴くための方法です。
そのほかに、私は寝るときにも耳栓を使っています。
睡眠時の目的は音を遮断したいことなので、音楽用とは異なる耳栓がおすすめ。
簡単なのは電動工具を使うときなどように販売されている騒音用の耳栓です。
これはワークマン・ホームセンター・ドラッグストアなどで手軽に購入できる、いわゆる「化学の耳栓」のことですね。
その多くがウレタンやスポンジを主な材質としているため、耐久性はそれほど高くありません。
スポンジが固くなってしまい防音効果が薄れるため、毎晩の睡眠時だけに使用しても1〜2か月程度での交換をオススメします。
睡眠時の救急車のサイレンなど、聴きたくない音を聴かないための耳栓です。
しかし安心してください。
不思議ですが目覚ましの音はしっかり聞こえます。
そして最後に大事な場面としてお伝えしたいのが、電車に乗っているときの耳栓です。
実は、電車の中は恐ろしいほど音が決壊した洪水のようにあふれています。
私が睡眠用に使っている耳栓は電動工具のノイズ対策用で遮音性が高いモデルです。
その耳栓をしていても、電車のアナウンス音声は駅のホーム・電車の中に関係なく耳に突き刺さってきます。
実は、鉄道関係ではある意味仕方のないこと。
耳の遠いお年寄りや、雑踏の中となる駅のホーム・電車内でもアナウンスの音声を届けなければならない使命が鉄道会社にはあるからです。
駅のホームへ電車が入ってくることを知らないことは命の危険にも関係することだから鉄道会社はとてもアナウンスの音声に神経質になります。
そんなこともあってか、昔のレコーディングエンジニアの方は駅のホームでスピーカーのそばに立たなかったという逸話があるとかないとか?
さて、ここまで読んでみて、耳栓の良さを感じられたことでしょう。
では、どんな耳栓が良いのだろう?と思いますよね。その疑問にお応えします。
私のオススメする耳栓は以下のものです。
音楽向け入門用には「CRESCENDO 耳栓 ライブ用 イヤープロテクター MUSIC」をお勧めします。
ドラム用、ボーカル用などさまざまなタイプがCRESCENDブランドから発売されていますが、まずこのMUSICを試してみてから、不足する音域を遮音する製品を探すと良いでしょう。
ライブ鑑賞にも使えるので、無駄にはなることはありません。
その他では「クラムワークス」の耳栓も音質の変化が少なく遮音性に優れていてオススメです。
睡眠などの遮音性がほしい時には「デシダンプ ファームフィット」が最適でしょう。
使い捨てではありませんが、ある程度の期間で交換するタイプの商品ですので、単価の低いものが安心ですね。
耳は一度痛むとなかなか治りません。
健康なうちに予防しておきましょう。