学生時代から英語が大の苦手。そんな私は当然のように洋楽を避けていました。
しかし、あるとき洋楽と邦楽にある大きな「隔たり」を感じるきっかけがありました。そして、その理由を突き詰めてみるとそこには簡単なことですが、大きな落とし穴を見つけることができたのです。
英語を堪能になり洋楽の歌詞を理解しなければならないわけではありません。しかし、英語が得意でなくても洋楽と邦楽の違いを知ることで、ひとつ上のレベルを目指せるようになります。お手本はたくさん転がっています。
あなたの好きな曲をなぜ気に入ったのか、その理由を知ってみると意外なことに突き当たります。
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アメリカは各国から移り住んだ移民で成り立っている国です。
もちろんアメリカ生まれのアメリカ人もいますが、元々のネイティブアメリカンは先住民です。
つまり、現代のアメリカ人の多くは移民をルーツにしているのです。
移民の国では、誰もが両親の宗教や祖国の音楽を愛します。
そのため、ビルボードチャートではカントリーからフォークやロックまで多種多様なジャンルが設定されています。
そのビルボードで1位になる音楽は、多種多様な人種から支持を集めた曲ということが言えます。
もちろん邦楽にも歌謡曲はあるし、Jポップ・演歌・民謡とさまざまな音楽があります。
その中にジャズ・フュージョン・ロック・アイドルなど、さまざまな音楽要素が新しく生まれています。
あなたがどの音楽を好きになってもいいのです。 感性は人それぞれ。ビジュアル・歌唱力・演奏・楽曲、さまざまな愛される理由がそこにあります。
特に民謡や演歌は日本でも地域性があります。その地域の気候や地形・風景に影響を受けていることが少なくありません。
若い人には地域独特の方言やなまりが恥ずかしいと感じる風潮も見受けられますが、地域特性として特に民謡では広く受け入れられています。
では地域性の高い音楽は全国区で受け入れられないのでしょうか。 そんなことはありません。地域から全国区となった歌手はたくさんいます。
特に沖縄はフィンガー5に始まり、SPEED・安室奈美恵など多くのトップアーティストを輩出しています。
島唄というヒット曲も多くの人が知っていますね。 地域特色が強いからといって全国区で勝負にならないわけではないのです。
ある地域の音楽でも、他の地域で理解されるエッセンスがあれば受け入れらることはたくさんあります。
歌詞・スケール・ダンス・楽曲など人々を共感を得るエッセンスがたくさんあるのです。
特にドラムの演奏において現代の楽曲で大切なポイントは、2拍・4拍に置くバックビートと呼ばれるスネアのタイミングです。
このバックビートに対する意識の違いは洋楽と邦楽で大きく違います。
ジャパニーズロックと呼ばれる昭和のロックでは、タメが重要とされてきました。
そのため、昭和の時代に流行ったロックではタメの効いた曲が多くあります。 世良公則&ツイストなどは誰もが知る代表的な邦楽ロックではないでしょうか。
タメが効いていることは悪いことではありません。音楽の表現としてタメがスパイスになっているのです。
洋楽でいう「レイドバック」はタメに近い言葉かもしれません。つまり洋楽にもタメはあるのです。
しかし、タメを意識するあまりリズムが遅れてしまうアマチュアミュージシャンが多いことも事実です。
「2拍・4拍をゆったり聴かせること」はタメを意識するドラマーにとって重要なポイント。 しかし、そのまま次の1拍目が遅れてしまうのでは、ただの「モタった」演奏になってしまいます。
ドラマーが注意すべきポイントとして「テンポキープ」がよく挙げられます。
タメても構わないけれどモタってしまってはバンドサウンドを壊してしまいます。そこでタメとモタるがどう違うのか気になりませんか。
タメはテンポキープができている前提で、ある特定の拍をゆったりと演奏したものです。
一方でモタるというのはテンポキープができなくどんどんテンポが遅くなっていくイメージが近いと思います。
ドラム1人だけで行う演奏ならまだしもバンドで演奏するならば、モタらないビートが理想となってくることは明白ですね。
そのために意識していきたいポイントは「タメない」ということです。
これは「個性を無くせ」という意味ではありません。
そうは言っても私たち日本人の生活環境には邦楽が溢れかえっています。盆踊りのように私たちは自然とタメを好む人種なのです。
意図的にタメを排除しても皆無にすることはほぼ不可能。
だからこそ出来る限りタメを排除することがこれからの時代の音楽に通じるポイントとなってきます。
多くのコンサートホール・ライブハウスで素晴らしい演奏に触れることができます。
観客は手拍子を打ったり体を揺らしたりすることで曲や演奏を楽しんでくれます。
そこに意図しないタイミングで音が発せられたら手拍子はどうなってしまうでしょうか。
実は観客が「おっとっと」とならないためにもテンポキープが重要なのです。
洋楽すべてが最高級な品質の音楽であるとは限りません。 ただ、ヒットチャートを通じて日本へ届く洋楽にはヒットするだけの理由があります。
日本でもEDMと呼ばれるコンピュータによる打ち込み音楽が増えてきました。
以前はレコーディング予算も関係していたことを否定しませんが「タメを排除した音楽を作りやすい」という特性があることも事実です。
トップドラマーは素晴らしいリズムを演奏してくれます。
しかし予算も限られているし、人気ドラマーのスケジュール帳は真っ黒です。
つまり打ち込み音楽は低予算でトップドラマーに演奏してもらったような効果を得られることに可能性があるのです。もちろん作り込みや追い込みは必要なので、そこは誤解なきよう。
それでは、我々ドラマーはどうすれば良いのでしょうか。
定番と呼ばれる洋楽を参考にしてみましょう。
過去の名盤と呼ばれるアルバムにはメトロノームやクリックのなかった時代の音楽でも素晴らしい名演がたくさんあります。
人が演奏したと思えないほど正確な演奏もあります。 それらはまぎれもなく世界レベルのトップドラマーが芸術として演奏してきたアルバムなのです。
ベニーグッドマンのカーネギーホールでのライブアルバムは有名なアルバムです。古い音源をCDにしたものなのでノイズは多いですが、ジーン・クルーパーによるドラムの演奏は素晴らしく、必聴盤と言っても間違いないでしょう。
コンピュータが演奏したとも呼べるほどの正確な演奏を真似てみましょう。
演奏をコピーすることで、その楽曲がもつニュアンスの理解にもつながりますが、自分の癖を見つけ出すことができるのです。
難しい難解フレーズではなく、一般的なエイトビートでかまいません。
そのニュアンスを真似することで得られる演奏能力の向上は計り知れないものが。とてもお勧めしたい練習方法のひとつです。
自分がコピーした演奏を録音して聴いてみましょう。そこにはオリジナルの演奏と異なるポイントがあるはずです。
もちろんあなたはオリジナルの演奏者ではないのですから、全くニュアンスまで同一にできなくて当然です。
ポイントは「似せること」ではなく「自分の癖を取り除くこと」です。
モタらない演奏・タメの少ない演奏を目指すことがドラマーに求められる大きなスキルです。
邦楽には邦楽の良さがあると同時に、邦楽も時代にあわせて変化しています。 そして邦楽のリズムは洋楽に近づきつつあります。 それはアメリカで修行したドラマーさんの人気が高いことや打ち込み音楽が増えてきていることからも明白。
もちろん、変拍子や地域独自のリズムを否定していません。 狙う音楽が違っているのです。
現代の観客は海外ドラマーの演奏や打ち込み音楽に耳が慣れてきているので、モタった演奏はすぐに気づかれます。
自分が演奏したい音楽をイメージしてみましょう。 それが現代の音楽シーンの曲調ならば洋楽をお手本にすることは最も身近なトレーニング方法と言えるでしょう。