ジョーポーカロ、初めてその名を知ったのは高校生の頃。
リズム&ドラムマガジンで読んだ気がする。
詳細なことはもう覚えていない。
もしかしたら最近の人には馴染みのない名前かもしれないけれど、今回はジョーポーカロ氏(以下、敬称略)について掘り下げてみたいと思います。
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スタジオミュージシャンをしながら、ロスアンゼルスにあったP.I.T.(Percussion Institute of Technology)という音楽学校の講師もしていた。
いま、P.I.T.は総合音楽学校としてMI(Musicians Institute)という名前で活動しており、ジョーも名前を連ねている。
ジョーはドラムだけでなくハンドパーカッションの講師もしているようだ(確証不明)
ジョーが最も有名なのは、TOTOのドラマーであったジェフポーカロの父としてではないだろうか。
TOTOはジェフのほかにスティーブポーカロとマイクポーカロという兄弟も在籍していた超売れっ子ロックバンドだ。
そしてジェフはTOTO以外にも、いったいどのくらいの仕事をしたか計り知れないほどのレコーディングとライブをこなす超有名ドラマーである。
そのジェフの音源を記録した「ジェフ・ポーカロの(ほぼ)全仕事」という書籍も出版されているのでジェフの音源を探す際の参考にすると良い。
ジェフマニアはたくさんいるので、ここではジェフについて詳細には触れない。
しかしジェフが最初にドラムを演奏するきっかけになったのは紛れもなくジョーの影響であろう。
blues.the-butcher-590213・シアターブルック・大塚愛・さかいゆうなど様々なシーンで活躍するドラマーである沼澤尚もジョーの愛弟子の1人である。
ジョーに習いたいという理由でロスアンゼルスの音楽学校P.I.T.に留学した沼澤は同校でドラムを始める。その後P.I.T.に残り講師としての道を進みながらも、ロスを中心に活動の幅を広げ日本へ逆輸入アーティストとして活躍していた。
その後、日本へ帰国し超人気ドラマーとして活躍することになるが、沼澤もグリップと音色の引き出し方はジョーが作ってくれたと数々のインタビューで語っている。
大学卒業と同時に渡米した沼澤はネイティブとの英語での会話が苦手だったらしい。
それを聴いたジョーは「夜になったらうちに来い」と自宅に呼び入れ、家族とともに英会話についても沼澤を支えた。
そんな人柄もジェフ、沼澤というドラマーを育て上げたジョーならではだろう。
沼澤の超売れっ子ぶりにより、ジョーの名前も漏れ伝え聞くようになり、ジョー目当てに海外留学するドラマーも後を絶たなかった。
ちなみに私の知人ドラマーはMIへ留学しながらも、派手な演奏に取り憑かれ一度もジョーのレッスンを受けなかったらしい。
人の好みはあるものの、なんとも言葉を失ってしまうできごとだった。
私はロスへ行ったことはないが、今でもロスのジャズバーで演奏していると聞く。
親しい友人との演奏を楽しんでいる様子だ。
私の知っている限り、2度来日している。
最初は、ジェフが他界した1992年に行われたTOTOの来日公演だ。
私は日本武道館での公演を見たが、ジョーはアンコールでスペシャルゲストとしてコールされ、名曲アフリカなどでパーカッションを演奏した。
次に来日したのは2015年、東京丸の内にあるコットンクラブで「JOE PORCARO QUARTET featuring EMIL RICHARDS」として3日間にわたって6公演を行なった。
この公演も私は見ていたが、年齢を感じさせない素晴らしい演奏だった。
透き通った軽い音だが芯のある音色は大音量ではなく、明確な音でグループをリードしていた姿が印象に残っている。
沼澤は2015年のジョーを初来日と言っていたが、1992年当時、彼は米国にいたことからTOTOとツアーしていたことを知らなかったのかもしれない。
フィーチャーされているエミルリチャードはジャズのビブラフォン奏者であり、ジョーの旧友である。
ジョーとともに高齢であるためか、ほぼ椅子に座っての演奏ではあったが素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
ジョーはいわゆるジャズドラマーである。
左利きなので、セットは通常と左右逆にセットしている。
MIの宣材としてYouTubeに数本、シンバルレガートなどのレクチャーがあるので参考にしてみると良いだろう。
私も繰り返し何度も参考にしている。
特筆すべきは、素晴らしい音色の透明さ。
細かな演奏テクニックについてここでは述べないが、YouTubeのレッスン動画からぜひ盗み取ってほしい。
ジョー名義ではないが、前出のエミルリチャード名義のライブ・アルバムでジョーの演奏を聴くことができる。
曲はエミルのものと思われるが、とても生々しく繊細なジョーの演奏が聴ける。
ジャズなので、ジョーのドラムソロももちろん、2015年のコットンクラブ公演で演奏された曲も収録されている。
他のエミル作品を聴いたことがないので、ジョーが参加しているかどうかは不明だが、このアルバムには間違いなくジョーが参加している。
最後のメンバー紹介でもしっかり「ジョー・ポカーロ」と呼ばれている。
(Pocaroはポーカロと読む人とポカーロと読む人がいる。どちらが正しいのかは不明)
ジョーにレッスンを受けた著名アーティストはまだまだいる。
Yasei Collectiveでドラマーを務める松下マサナオもその1人だ。
じっくり聴くことでジョー、沼澤、松下の発音の特徴を見つけることができるかも。
最後になるが重要な点はジェフマニア、沼澤マニアはたくさんいるが誰も本人にはなれないということだ。
ジェフや沼澤の好きな要素を探すならオリジナルとも言えるジョーを聴くのが最短ルートであることは間違いない。
もちろん、ジェフや沼澤が参考にしたドラマーは限りなく多い。
それらはモノマネではない。
あるのは本質だ。