尊敬する某ベーシストから、以前こんな話を聴きました。
「CDやレコードをちゃんと聴かないと理想の音なんて判断つかないよ。」
この『ちゃんと』という言葉が実に重い言葉で、まさにその通りと感じた次第だったことを思い出します。
普段、イヤホンで音楽を聴いている方。
ぜひともステレオコンポーネント(以下コンポ)についても知ってみませんか?
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CDやレコードを聴く音楽システムやラジカセのことです。
ここで言う音楽システムとは、機能別にバラ売りされているコンポーネント機器のことを指すとしましょう。
私も過去にはいわゆるバラ売りのコンポを使っていました。
プリアンプとパワーアンプが別々なのは当然として、その出力やアンプ駆動方式にもこだわったものです。
カセットデッキやラジオチューナーもありました。
ラジオの留守録に対応するためタイマーも別に購入したものです。
この現代において、そんな機材で音楽を聴いている人はそうそういないと思います。
私も道楽でなければ、そんな機材を置いておくスペースなんてリビングにありません。
しかし、このコンポたちは結婚して子供が生まれるまで現役でした。
子どもができたとき、常に音楽に触れる環境にしてあげようと考えました。
そのためには家族が使えるコンポでなければならなかったのです。
プリアンプを触ったことのある人ならわかると思いますが、コンポにはいろんな約束事があります。
電源を入れる順序、ライン入力セレクターのセットなど。
家族にはプリアンプもパワーアンプも他の機材も同じに見えるそうです。
そのため、もっと簡単に操作できるコンポが必要になったのです。
当時、近くに専門店がなかったので、車でコンポを買いにいきました。
家族の要求は、簡単に扱えること・リモコンが付いていること。
この2点でした。
私は音質と価格にもこだわり、サンスイのミニコンポを購入しました。
電源はひとつだし、ほとんどの操作がリモコンで操作できる。
これは便利とばかりに、家族もCDを常に再生してくれていました。
子どもができたとき、胎内で起きてる時間と母親の起きてる時間は別だと思っていた私は、24時間再生でCDを流し続けたのです。
Charに始まり歌謡曲から胎教に良いとされるクラシック音楽までありとあらゆるジャンルのCDを再生していました。
しかしながら、バラ売りのコンポとは異なり、ミニコンポは寿命が短かったのです。
そこはいろいろ理由があるのですがまたにしましょう。
その後しばらくのCD再生はiMacでした。
すっかりHDDに録り溜めた圧縮音源の便利さに慣れてしまい、iTunesが再生プレーヤーとして君臨していたのです。
それで満足したかというとそうではありません。
やはりPCとして音が良いことと、音楽再生環境が整っていることは別物だったのです。
かかりつけの歯科医の先生は音楽の好きな人で、歯科医へ行くたびに何が再生されているかワクワクしていたものです。
その先生は、診療室の中にオンキョーのミニコンポを置き、USBメモリでWAVEファイル再生をしていました。
そしてカセットデッキなどをつなぐLine Out端子へ真空管アンプをつないでスピーカーへとセッティングされていたのです。
興味津々な私は真空管アンプの型番をスマホで写真に撮らせてもらい、帰宅してから型番を調べました。
それは真空管を3本使ったステレオパワーアンプだったのです。
スイッチの入った私はシステムを組むといくらくらいになるのか、家電量販店で調べて回りましたが、子どもも大きくなった世帯では簡単に手が出せる金額ではありませんでした。
たまたま百貨店を回っていたときです。
紳士服売り場から店内BGMではない音楽が聞こえます。
当然気になり、音の出口を探し出しました。
それは期間限定のステレオ移動販売だったのです。
ビクタースタジオの音響を再現しようとしたコンポという触れ込み。
期待がもてます。
念のため型番を聞いて一旦帰宅し、いろいろ調べてみました。
こりゃ良さそう!
翌日、CDを20枚ほど持って試聴するために再び百貨店へ。
様々なジャンルの音源を聴いて感じたことは、以前持っていたコンポよりも音が良いということです。
ここで久しぶりのコンポ購入になったわけです。
JVCビクターのEX-B5というモデルです。
決して使い勝手の良いコンポではありません。
最近ではもっと賢い便利なコンポがたくさんあると思います。
しかし、このモデルにはそれだけの魅力がありました。
良いステレオの特徴として、音量を上げてもうるさくない、ということが挙げられます。
耳障りな音ではないという意味で、ここが大きなポイントです。
これはアンプ出力やスピーカー出力だけの問題ではなくて親和性が高いということ。
もちろん予算もありますが、音楽再生環境に悩んでいたときに高解像度な音楽再生能力を持って現れたからです。
例えばベーシストなら楽器やケーブル、アンプのセッティングにこだわるでしょう。
しかし、肝心要となる自分の耳が腐っていたらそれまでです。
良い音を聴き分けられるようにするには普段から良い音に接していないと腐った音も鯛になってしまいます。
自分にとって良い音の基準を持つことは大切です。
なにもオーディオマニアになれ、ということではありません。
良い音の基準を知っておくことが大切という意味です。
その点でビクタースタジオのチューニングを知るというのはとても貴重な体験であると、私は感じました。
冒頭の某ベーシストの再生環境はパワーアンプだけで80万円くらいするシステムでした。
そこまでする必要はないと感じていますが、高級イヤホンだけで耳が育つわけでもありません。
楽器から出てくる音が混ざって空気を震わせた振動を聴くことが大切だと私は考えています。
そのため、移動中などの高級イヤホンもいいですが、空気を震わせて鳴らす音にも耳を慣らしておきたいところです。
ぜひ、ご自身の音楽性を成長させるためにも、コンポで音楽を聴いてみませんか?
もちろんラジカセであっても構いません。
空気の震える音を聴いてみましょう。