2016年8月7日に開催されたマイネル主催のベニー・グレブ氏(以下ベニー)による ドラムクリニックの模様をご紹介。
この日、ベニーは初来日ということもあって、様々な関係者が取材に来ていた。
私自身はチケットを買うまでベニーを知らなかったのだが、検索で知ったYouTubeでのドラム動画はかなりの再生数だった。
その迫力はやはり生演奏を聴くことで圧倒されることになる。
Contents
気になる機材は暗くもあり、なかなか写真が撮れずにいたが、かろうじて見返すことのできる1枚とともに。
SONOR社の黒っぽいビンテージシリーズの3点セット。
サイズはBDが20″×14″、FTが16″×14″、TTは10″×8″
スネアはシグネチャーモデルのSSD-13575BGで13″x5.75″をメインスネアとサイドスネアに2台使っていました。
サイドスネアはバスっという深く響くローピッチで効果的に使われていました。
驚くほど多くの音色と音数が表現されていて、本当に3点セットなのか不思議でならないほど多彩な演奏。
思わず、SONORのビンテージシリーズが欲しくなってしまう落とし穴のような演奏でした。
マイネル社主催イベントだけあって、シンバルの説明は詳しくされていた。
向かって一番右にセットされた小口径の刻み用シンバルは聞き取れなかったけれど、8″のベルとスプラッシュの組み合わせだった記憶。
14″ハイハットの下にもGenerationXが1枚敷かれており、ハイハットは3枚組み。
フットハイハットでも刻みでもノイズ感のあるジッという音色が効果的だった。
特にオープンではボトム側シンバルが鳴らないようになっているのかクリアなオープンサウンドだったのが印象的。
またGenerationXが好きすぎてハイハット側の18″クラッシュシンバル下にも14″を1枚忍ばせていると言っていた。
写真からスタックされていることがわかると思う。
フロアタム側には22″のクラッシュライド。
ほぼ刻むことはなくクラッシュとして使われていました。
その下には16″穴あきシンバルを組み合わせ、ハイハットのように使っていた。
16″穴あきの上にはハイハットタンバリンが乗せられておりアクセント効果が。
また角度は自分側に傾けるのではなく、外に向かって大きく傾けられている点が写真からも見受けられる。
これは予想するに、穴あきを刻みで使うにあたって、穴にスティックを入れないよう、エッジを刻むためだったのではないだろうか。
一番左のフロア上にはライドシンバルが1枚。
このライドの印象はあまりないが、マイネルのシンバルはとても品質が良いのでこんなことも平気とベニーがライドシンバルに寄り掛かり、グニャッと曲げてしまった。
しかしカラダを離すとシンバルは何事もなかったかのように元どおりに。
音色とともにその柔らかさからマイネルシンバルがほしいと感じた瞬間でもあった。
スタックシンバルについては以下の記事でも触れているので参考にしていただきたい。
そしてタム横にはベニー自作のスタックシンバル。
なんと4枚重ねで、中間の1枚はカップ部分が切り取られたドーナツ形状。
この4枚の音はザクザクしており、後日シグネチャーモデルとして販売されることになった。
ベニーからはマイネルは品質が良いので、4枚組の自作スタック以外は日本で揃えたシンバルだと言っていた。
個体差がどのくらいあるのか不明だが、非常にまとまった音色で全体のバランスがとてもよかった。
松下マサナオ氏がオープニングとして演奏を開始。
ドラムソロから始まり、音源にあわせてドラムを演奏されていた。
その後、メインとなるベニーのコーナーが始まる。
ベニーのクリニックでは、メモを見ながら日本語での挨拶を披露。
本人曰く、今日一番重要なパートだとのこと(笑)
何度か噛みながらも上手に挨拶されていた。
とても茶目っ気の多いベニーは底抜けに明るい印象。
質疑タイムの前にデモ演奏として数曲、音源にあわせてドラムを演奏。
もちろんYouTubeで有名なGREBFRUITも演奏してくれた。
ドラムソロの中間から後半部分は当日のオリジナルだったが、後半の演奏にピッタリ戻るソロ終わりでは観衆も大きく盛り上がった。
その他にも素手でドラムを演奏したり、口を開けて頬を叩いたり様々な音色を披露してくれた。
お約束とも言えるフロアタムのシェルを横からスティックで鳴らしカラカラと乾いた音で刻む手法はあまりにも音量が大きく、レンタル楽器で平気なのか不安になってしまった(後日、サイン入りでI楽器さんから販売されていたので納得)
デモ演奏中、豪快に18″クラッシュシンバルを叩き飛ばしていたのはご愛嬌。
ショットが早すぎて腕もスティックも残像に。
シンバルを弾き飛ばした後も冷静に演奏しながらセッティングし直していたのが驚異的。
質疑は日本でマイネルを取り扱うキョーリツコーポレーションさんが英語を通訳してくれたが、ベニーは易しい単語を選んで使ってくれており、英語でもニュアンスが聞き取れた人は少なくなかったのではないだろうか。
練習方法などでも、独自のアイデアをたっぷり披露してくれた。
これらは、クリニック後に購入したベニーの教則DVDの中で詳細に確認できるが、クリニックの中でも紹介されていた。
チッチッと口でカウントを刻みながら音形トレーニングするのが良いとのこと。
これは私も帰宅後試してみたが、とても良いトレーニングになるので、ぜひお薦めしたい。
メトロノームに合わせながらトレーニングすると自分の癖がわかりやすく音形の修正にとても良い内容だった。
これはいわゆるチェンジアップを発展させた形で、ドラムのオーケストレーションにも応用できる素晴らしい内容なので、重ねてお薦めしたい。
そのほかにリラックスするためのメンタル面での質疑もあった。
ベニーは過去の自分の経験を交えて、楽しむことと準備することが大切と言っていたのが印象的。
どんな状況下でも自分のできるベストを尽くすという方法が大切だと語っていたのは印象的。
このクリニックの準備でも開演は夕方なのに朝から会場入りしてチューニングとマイク・PAのチェックなど念入りにしていたそう。
同行しているマネージャーさん(?)もドラマーで、彼に叩いてもらいながら会場での音の聴こえ方などをチェックして回ったらしい。
松下マサナオ氏と一緒にドラムバトル!
ため息にも似た声が会場から止まることなく聴こえてきた。
YouTubeだけではわからないことはあるもの、と感じた。
それだけ生演奏の迫力と魅力をベニーは持っていた。
大音量だけどうるさくない音色にはハイハットが4種類も準備されていることが大きいと思われた。
ロックなら迫力を出すのにハイハットをハーフオープンでかき鳴らすようなところでもベニーは冷静だ。
音色の異なる刻み用のハイハットを使い分け音楽を盛り上げていく方法はぜひ盗みたいテクニックだ。
終演後には物販でベニーとサインや会話のできる機会が与えられた。
希望者が殺到し、早々に並ぶことを諦めてしまったが、真摯に受け応えするベニーは非常に笑顔でフレンドリーだった。
物販ではI楽器さんからブースを出されており、サイン入りシンバルケースなど、今思うと買っておけば良かったと思うものがいくつもあった。
逸した機会は大きいと感じた最近である。
この日を境に、ベニーは私のお気に入りドラマーのトップグループへ仲間入りした。
今ではドライブ中にベニーのCDを聴くほど。
心地よいノリと多彩な音色を楽しませてくれるベニーはまさにドラムヒーロー。
音楽が盛り上がってきてもハイハットをオープンにしながらガシガシ叩くことを辞めたきっかけでもある。
いくつかの刻みを使い分けることで抑揚をつけるのは新しい方法に感じた。
当日のクリニックで紹介されたトレーニング方法が解説されている以下の教則ビデオもぜひ参考にしていただきたい。
私が購入した頃は日本語版がなく、英語版を必死に聴き取ろうとしたが、今は日本語版があるので、そちらがお薦めs。