私たちは歩く時など無意識にカラダを動かして歩いています。
ではそのカラダの動きについて、腕がどの方向へ、肘がどの方向へ動くのか意識して考えたことはあるでしょうか。
多くの人が気にすることなく無意識に動かしていることと思います。
実際の生活や演奏に必要な知識ではありませんが、自分のカラダを知るためにもカラダの部位について動かせる方向をあらためて考えてみましょう。
本記事はわかりやすくするため、生理解剖学とは若干異なるアプローチでの記載をしています。
より詳しい知識が必要な方は生理解剖学の書籍をご確認ください。
Contents
ドラムやパーカッションの演奏で最も必要な腕の動きを解明してみましょう。
腕の動く向きを知ることで、より大きく柔らかな演奏が可能になるはず。
肩関節は肩甲骨から球状の関節を経て上腕につながっています。
球状の関節は前面にほぼ360度という大きな可動域を持ち、前後上下方向ならばどの向きにも腕を振り上げる、もしくは振り下ろすことができる関節です。
主に使われる筋肉は肩関節を上から前、横、後ろに向けて上腕を支えている三角筋。
肩関節は回す機能に優れていますが、伸び縮みという点に関しては肩関節の土台となる肩甲骨の動きに大きく依存します。
そのため、タム移動や高い位置にあるシンバルを演奏するときに腕を伸ばすには肩甲骨の柔軟性が大切です。
肩甲骨の柔軟性については広背筋が影響するので、演奏前には広背筋のストレッチを行うことで演奏に柔らかさが現れることでしょう。
実は、肘は曲げ伸ばししかできない二次元の関節になります。
いや、捻ることができるじゃないか、という意見もあると思いますが、それは前腕を構成する2本の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)という骨がねじれること(回外・回内)で実現できているのです。
そのため、肘は曲げ伸ばししかできません。
手首をぐるぐる捻ることができるのは前腕の機能になります。
肘関節は前出のように二次元で180度開閉する関節になりますが、この関節を動かすのは上腕の表側(上側)にある上腕二頭筋と裏側(下側)にある上腕三頭筋。
この2種類の筋肉が互いに伸び縮みすることで肘関節を曲げたり伸ばしたりします。
肘関節を素早く動かすためには上腕二頭筋と上腕三頭筋を柔らかく使えるようになることが重要。
そのため、筋肉が硬くなるような力の入れ方は厳禁です。
よく「肩に力が入っているよ」と言われることがありませんか?
それは肩甲骨を支える広背筋と上腕を支える上腕二頭筋や上腕三頭筋に力が入ってしまい、筋肉が硬くなってしまっているのです。
筋肉が硬くなると伸び縮みできなくなるので、肘関節は曲げ伸ばしできなくなってしまいます。
ドラムやパーカッションの演奏に支障が出ることは容易に想像できることと思うので、良い演奏のため、事前のストレッチを行ったり過度な緊張を避けるようにしましょう。
いわゆる手首は手の甲側に向ける、手のひら側に向けるという二次元方向の関節です。
手首を捻る動きは前出した前腕の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)がねじれる関係で作られる前腕の機能。
手首の関節自体は曲げることしかできません。
しかしドラムやパーカッションの演奏においてとても重要な手首の動きを知っておくことは重要。
ここはもう少し踏み込んでおきましょう。
ドラムのスティックの握りでジャーマングリップやフレンチグリップという名前を聞いたことがあるでしょうか。
これらは手の甲を上に向けるか横に向けるかの違いですが、この手の甲の向きは前腕の捻りによって作られます。
そのため、手首の可動領域として大きく解放するか、小さく解放するかという違いが生まれてくるのです。
出したい音にあわせてストローク幅をコントロールしたい、指のグリップでのスピードを高めたい、などのリクエストにあわせて前腕の捻る向きを使い分けることで柔軟な演奏が可能になります。
脚部について、ドラムでは主に座って演奏しますが、パーカッションではカウベルやタンバリンなどペダルを使って立奏することも多いでしょう。
カホンは座って演奏することが多いけれど、最近ではペダルを使って演奏する機会も増えています。
その脚部の関節についても詳しく見ていきましょう。
お尻の中にある骨盤と太ももを支える大腿骨をつなぐ部分が股関節になります。
股関節は肩関節と同じ球状の関節を持ちますが、肩関節ほどの稼働域の広さはありません。
さらに斜め下方向への可動領域を持つため、大腿骨の運動に関しては骨盤の向きを意識する必要があります。
骨盤の向きで股関節の解放領域が変わるためです。
脚部はカラダの体重を全て支えることができるだけの力があるため、股関節は非常に複雑な筋肉群で構成されています。
バスドラムの演奏などで膝を挙げる動きは股関節で行います。
前出の通り、股関節を支える筋肉群はとても多く複雑な動きをするので省略しますが、意識してほしいのは股関節の土台となる骨盤の向きです。
骨盤は前傾、後傾ができるように背骨から独立してその向きを変えることができるのです。
実際、骨盤は椅子に腰で座っているときは後傾、まっすぐ背筋を立ててパイプ椅子などに座っているときは前傾しています。
先に骨盤の向きで股関節の解放領域が変わると書きました。
骨盤が後傾していると大腿骨は膝が外を向いたO脚の状態になります。
また前傾すると大腿骨は膝が内側を向いた内股の状態に解放領域が変化します。
余談ですが、これらのO脚や内股は骨格の歪みでもなんでもなく、筋肉の前後バランスの乱れですので、意識するだけでは治りません。
その姿勢を維持する筋肉群を鍛えることによって、O脚も内股も治すことができるのです。
バスドラムやハイハットの演奏に使う脚の動きについて考えてみましょう。
後述しますが、膝は曲げ伸ばししかできない二次元関節です。
そのため、ドラム椅子に座ったときにペダルを演奏するために太ももを挙げる向きは骨盤の前傾と後傾に関係してきます。
ここで説明は簡略化しますが、大腿骨の開放度を高めるため、前傾でも後傾でもない脚部を動かしやすい向きに骨盤を立ててドラム椅子に座ることをお勧めします。
その目安は座ってみて足がO脚でも内股でもない状態を意識してみてください。
もちろん奏法によって個性があって良いので、どちらか寄りの方が演奏しやすいということもあります。
しかし、あくまで脚は「上げて下げる」です。
その脚を上げ下げする方向について、骨盤の向きを意識することは重要になります。
前出しましたが、膝は曲げ伸ばししかできない二次元関節になります。
バスドラムなどの演奏では膝を上げ下げするだけなので、膝関節の関与はほとんどありません。
ドラム椅子の高さに関係して膝の曲がる角度が変わることはあります。
しかし膝の曲げ伸ばしが演奏に大きな影響を与えることは稀です。
主に太ももを上下する股関節の動きと足首の動きを意識するのが良いでしょう。
足首は足根骨(そっこんこつ)と呼ばれる7つの骨と、スネにある2本の脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)から構成されています。
実は足根骨(そっこんこつ)自体に可動域はあまりなく、脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)との組み合わせで足首が可動するのです。
また脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)はそのねじれ具合で足首の向きを左右に振ることができます。
O脚と区別して覚えておきたい部分ですね。
バスドラムやハイハットの演奏では足首の動きがとても重要になってきます。
また足根骨の先についている足の甲にあたる中足骨(ちゅうそくこつ)や足の指の稼働域も大きな要素です。
バスドラムの細かいフレーズや高速なフレーズなどは主に足首の動きが重要になってきますので、足首を動かすスネの筋肉を鍛えておくことも大切になってきます。
ドラムやパーカッションを演奏する腕や脚部の関節の動く向きや筋肉を知っておくことは意外と重要だったりします。
思うように演奏できないとき、原因をさぐると骨の向きに依存しているケースが少なくありません。
多くの場合、スタジオには鏡が設置されています。
フォームをチェックして、どの部分に意図しない動きが含まれているのか定期的にチェックするようにしてはいかが。
そのうち、無意識にその動きができるようになってくるでしょう。